暗闇のほとりで

読んでいる本についてつらつら書いています

読書雑記-冬目景「空電の姫君」「羊のうた」、小林俊彦「ぱられる」「セーラー服、ときどきエプロン」、大塚英志『二階の住人とその時代 転形期のサブカルチャー私史』など

 読みさしのままにしているマンガを読もう、ということで冬目景「空電の姫君」3巻と「羊のうた」7巻を読み終えた。いずれも完結巻で、「羊のうた」は幾度目かの再読。

 「空電の姫君」3巻は「空電ノイズの姫君」から数えて6巻目、それだけの話を重ねていたっけ…というくらいに夜祈子がアルタゴに加入してからの印象が強くて、そして磨音と夜祈子ふたり自ずと悟っていたかのような別離、ラストカットの夜祈子の柔らかい表情を見ると、バンドと個人、それぞれの自律性がくっきりと見えて、この形もまた良かったんだろうなと思った。バンドが形成される、磨音が音楽を仕事とする前の話をまたさらっておきたいので、近々に読み返す。

 「羊のうた」7巻、高校生の頃にリアルタイムで完結を見届けてから、折に触れて再読している作品で、ストレートに、千砂の綺麗さ、儚さ、そして生へ焦がれる様が胸に残るのは、時が経っても変わらない。

 茨の道を歩んでいく、伴走して歩ませる人たちも、またここから始めればいい、と一歩踏み出した決心を描いたラストは、今回読んで、心強いなと思った。バッドエンドでもハッピーエンドでもなく、生きることが続いていく、最初から一人ではなく、傍らに大事な人がいることを、改めて知る感じで、八重樫に救われるのだった。また読もう。

 

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 kindle unlimited にまた加入したがお目当ての小林めぐみ食卓にビールを」の読み放題が終わっていてしょんぼり、読み放題で何か読むものはないかと探していると、小林俊彦「ぱられる」全4巻「セーラー服、ときどきエプロン」全4巻があったので読む。

「ぱられる」も高校生の頃にリアルタイムで読んでいた記憶があり、今回がおそらく10何年ぶりかの再読、読み始めるとああこの話、カット、読んだなあ…とすぐに思い出した。ラストで桜がなかなか大胆かつ奥ゆかしい煩悶したことを猫田に言っていて、こんな女の子にドキッとせずにはいられないよなまったく…!

「ぱられる」から小林俊彦という作家を認識して、以降、「ぱすてる」「青の島とねこ一匹」と読み継いでいる中、「セーラー服、ときどきエプロン」は2巻まで読んでいたけれど、あまりにも毒にも薬にもならないマンガすぎてつづきは読んでいなかったが、この機会に完結の4巻まで読んで、これが結構良かった。

 2巻の途中から登場する、新たな住人で、声優を職業としている松田みおの存在をまったく憶えていなくて、本当に2巻を読んだのか疑問だが、意図的に無口にしているみおと、アパートの管理人であるほのかのやり取りが、それまでのほのかがいたずらをやられっぱなしで終わる流れを変えて、ほのかが新たな住人をゲットするべく能動的に行動していく様がマンガに緩急を生んでいて、その流れが続きを読もうという気持ちになり、最後まで読むことができた。ページ数が多くあると、やっぱりドラマがないとどこに気持ちを寄せて読めばいいか迷子になっちゃうんだなあ…。

 

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 大塚英志『二階の住人とその時代 転形期のサブカルチャー私史』を読み進めて、もうそろそろで読了となる。べらぼうに面白い歴史物--社会、文化の特異点となった場所、人たちについての歴史、個人史が、ナイーブでなくノスタルジックでもなく、現在から振り返ってどのように影響を及ぼしていったのかを、次の世代以降へ引き継ぐためにしっかりと書き留めようとする意思が全編に行き届いていて、その語りこそ読み手を熱くさせるのだ。

 それにしても、何かを自分で選択するということの責任、重さはどんな人であっても訪れる、その時に、自分はこれからこうしていきたいという未来への感情が乗っていないと、半端なことになりかねないというのを文章の端々に見るのは、楽しみを享受しているばかりじゃなく、他の人に自分の思っていることを伝えて分かち合いたいという気持ちと連動しているからだろうか…受けるだけの人になってもつまんないよ、という、そこからの選択は、さて、自分はどうだろうか。

 

 

 

 

ぱられる 1

ぱられる 1

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