暗闇のほとりで

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映画雑記-アッバス・キアロスタミ「友だちのうちはどこ?」

アッバス・キアロスタミ「友だちのうちはどこ?」を観た。


堂々と間延びしたカットと会話へツッコミというか茶々を入れながら、映像に惹き込まれ、締めくくりにそれで良いんだ、そうか良いのかと少し呆然とした。
アハマッドの健気さが報われたというか、なんというか…はあー、と感嘆の音を漏らす。

お母さんは聞く耳をあんまり持ってくれないし、

アハマッドはぐずぐずと考えたり行動に踏み切ろうとして周りをキョロキョロしたり、それらがほぼ素材のままにごろんと映し出されて、より切実さと滑稽さが伝ってくるのがとてもおもしろかった。

いざ、という時に力強く駆け出すのが良かったなあ。


2回映し出される、ジグザグの山道を登り、てっぺんから左へまっすぐに下っていく様を、高台を見上げるように映した全景のカットがとても魅力的だった。
最初は1人、2回目はロバに乗ったおっさんを追っての駆ける子供の姿は涙ぐましく、自然はただただ綺麗。

 

タイトルそのままに、使命感から家を探して手ほどきを受けながら徒労に終わり、

( おそらく )父親に叱られたのか夕食を食べる気力が湧かず、

部屋に移ってから母親にまた夕食を出される優しさを受けながら、

家の外に強風が吹き荒れて洗濯物が乱れて母親が取り込もうとしているのを、

宿題をしながらぽかんとして見ているアハマッド、まず視界に起きていることを見るというのが意識に立つのか、そこからの行動がなかなか出ないのが、8歳の子供らしさなのか、そういうものでもないのか、その年齢から遠く離れ接することも無いと、こういうのもカルチャーショックになるのだろうか。

それにしてもぽかんとした表情、キラキラした瞳が眩しすぎる。あれはすごい…。

 

あと、めちゃめちゃ鮮明に鶏の鳴き声が聞こえるのが妙におもしろかったな…。
友達のノートを間違えて持って帰ってきてしまい、宿題ができず、退学させられるかもしれないので届けたいアハマッドと、手洗いで洗濯しながら子守りや宿題をまず行うよう言いつける母親、その周りで聞こえる鶏の鳴き声…。

無常感というか、吹っ切れるには良いアクセントになっているというか。

 

*

 

保坂和志の著作から十何年も前からタイトルだけは知っていて、なかなか観る機会を作れなかったけれど、去年のザ・シネマでの放映とAmazon Primeにてようやく観ることが出来た、そして観てとても良かった!


早い内に「そして人生はつづく」を観よう。

 

 

友だちのうちはどこ?(字幕版)

友だちのうちはどこ?(字幕版)

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