暗闇のほとりで

読んでいる本についてつらつら書いています

読書雑記 - 乗代雄介『十七八より』

乗代雄介『十七八より』、読み始めて約4ヶ月、集中して数十ページを読んでは休み、また読んでは休みで、ようやっと読み終えた。


緊密で、正直何を言っているのかよく分からない文章が記されている意味を惑いながら考え、つまりほぼお手上げの小説を最後まで読み通したのは、この小説は格闘する価値がある、この文体を選択した作者の賭けに乗ってみた、ということになる。

 

光る場面、文章が多くあり、それらが結びついているようなそのことを柔く拒否するような、いろんな記憶を掘り起こす気怠い感じが纏っているのがどうにも魅力的なのだ。

以降、刊行されている作品を読むのがとても楽しみ。

7月に『本物の読書家』が文庫で刊行予定とのこと、そこを読んで、すぐに『最高の任務』を手に取るか…。

 

巻末の群像新人文学賞 選考委員( 高橋源一郎多和田葉子辻原登 )からの選評も奮っている。特に辻原登の以下の言葉に尽きる。

この中身のない小説を受賞作として強く推したのは、時折、何を言っているのか分からないセンテンスやパラグラフから上がる軋り音の中に、ある種の捨ておけない才気が感じられたからである。

--

ぶかぶかの文体の可能性に賭けてみよう。


著者がその「何を言っているのか分からない」文章を熟知した上で、ぬけぬけと満天に放つ力強さ、妙な頼もしさに、読者として惹かれずにはいられないのだ。

これこそがまずは才能だな…そして、この小説はそれだけではないのである。読めば分かる輝きだ。