暗闇のほとりで

読んでいる本や中央競馬のレースについてつらつら書いています

 

若竹七海『プレゼント』を読み終える。

 

とにもかくにも「ロバの穴」の、悪意が渦を巻いて拡散していく様相に胸がずーんと来て、なかなか次の「殺人工作」を読む気になれなかった。

そこへ飛び込んでいったとしても、探偵役はなんと辛い役回りだ…。

 

歯切れの良い文章で綴られる、どこかねじが外れている気はするけれど倫理に真摯な葉村晶の目線が、 読んでいて追いかけるようになって次のページ、別のお話、最後のページへ行き着いた。

記憶力はさっぱり無いので、話の後半を読んで「なんだったっけこの道具立て…」となって冒頭を読み返して納得がいったり結局いかなかったりしつつ、

ここで直截に動機を書いていないのは想像に至る要素をすべて提示しているのであとは考えてみて、 と作者に言われているような気になって、

よしじゃあもう一回考えてみるかと冒頭から読み返して、無駄肉のない道具立てや意匠にハッと驚き、また鮮やかに裏返される。 

めくれ上がった真相に「そんなことがあるのか?」と思うのはアホみたいだけど、 「そういうこともあるのだ、この人たちだったら」と思わせる、そんな短編たちだった。

 

…「トラブル・メーカー」298ページの地の文での葉村晶のツッコミには、読んでいて吹き出してしまった。

状況からして、そらそうも言うわな…。ここでトラブルに巻き込まれた探偵の声が鮮明に伝わってきて、えらく印象に残ってしまった。 

 

*


若竹七海作品はこれが初読み。 ずっと前から名前を知っていたけれど、読む機会を見つけられないままで、 貸してもらったこの『プレゼント』もそこから1年半でようやく読み、これは良い作家を知ることが出来た。

 

次は『依頼人は死んだ』を読もう。夏には読もう。

 

 

プレゼント (中公文庫)

プレゼント (中公文庫)

  • 作者:若竹 七海
  • 発売日: 1998/12/01
  • メディア: 文庫